さいごのいっこ。
ちいさな誇り
ぼくは、10人兄弟でこの家にやってきた。
パックに入る前には、
ちゃんと「勉強会」があった。
「みんな、それぞれ立派な料理になるんだぞ。」
先生は、そう言っていた。
ゆでたまご。
目玉焼き。
たまご焼き。
オムライス。
親子丼。
お味噌汁。
茶碗蒸し。
どれも人気者らしい。
どれも食べた事はないけど、
食卓から聞こえてくる
「おいしい!」
「おかわりある?」
そんな笑い声を聞くたびに、
ぼくも早く誰かのお腹に
幸せを届けたいなぁって思っていた。
兄弟たちは、
一人、また一人と旅立っていく。
そして残ったのは、
ぼく、最後のいっこ。
少し寂しい。
でも、どんな料理になるんだろう。
そんなワクワクもあった。
その時だった。
ガチャ。
冷蔵庫が開いた。
家主のお姉さんだ。
……あれ?なんだか顔色が悪い。
目の下にはクマ。
髪も少しボサボサ。
「大丈夫かな……。」
ぼくが心配していると、
隣で最近友達になった梅干しが小さく笑った。
「ありゃあ、二日酔いだな。」
「フツカヨイ?」
「昨日、飲みすぎたんだよ。」
「病気じゃないの?」
「まぁ、似たようなもんだ。」
そう言うと、梅干しは先に連れていかれた。
続いて、ぼくも。
台所では、
白いつぶつぶのお米が
お水の中でくつくつと小さく踊っていた。
「なんていうお料理なんだろう。」
ぼくがつぶやくと、
梅干しが得意げに言う。
「今日はわたしたちの出番だよ。」
パカン。
殻が割れる。
ぼくはふわりと白い世界へ溶けていく。
ぐるぐる。
ぐるぐる。
熱に包まれながら、
ぼくはお米と少しずつ仲良くなった。
「よろしく。」
「よろしく。」
「なんか、あったかいね。」
湯気が立つ。
優しい匂いが広がる。
器によそわれたぼくらを、
彼女は両手で包むように持ち、小さく笑った。
「あぁ…生き返る。」
その一言で、ぼくはやっと分かった。
人気料理になることだけが、たまごの役目じゃない。
誰かが元気な日に笑顔を増やすことも、
誰かがつらい日に体を温めることも、
どっちも同じくらい、大切なんだ。
最後の一個だったぼくは、
最後だったからこそ、今日、この料理になれた。
兄弟たちみたいに、
食卓を賑やかにすることはできなかったけれど。
たった一人の、ホッとする時間を作れた。
それが少しだけ、誇らしかった。
2026.7.4(土)梅たまごがゆ。
あなたたちのおかげで、生き返りました。
ありがとう。家主のお姉さんより。



家族の話かと思ったら、優しく寄り添うお話に😌
あったかいんだから〜🥚
たまご10パック入りは多いようで意外とあっという間に色んな料理に変身していくんですよね😁
二日酔いに梅たまごがゆは最高だと思います。
ぼくはとんでもない酔い方して次の日の朝ホテルのトイレで目覚めまたことありまふが、温かいうどん食べたら復活しました。
とにかく栄養!
飲み過ぎには気をつけてくださいね。