勇者たちよ、健闘を祈る。
斜め向かいの、ふたり。
朝の電車。
たしか、ここは4号車。
斜め向かいには、
スーツ姿のサラリーマンが二人並んで座っていた。
おそらく、
今日初めて隣り合わせになった二人。
会話もない。
名前も知らない。
ただ偶然、
同じ時間、同じ車両に乗り合わせただけの他人。
右側のお兄さんは、
よほど疲れているのだろう。
電車が揺れるたび、
こくり。
こくり。
頭が前へ左右へ落ちる。
そのたびに私は、
(あぁ……隣の人の肩に乗りそう。)
そう思いながら、目が離せなくなっていた。
こくり。
こくり。
そして──
あっ、
ついに、右のお兄さんの頭が、
左のお兄さんの肩へ、そっと預けられた。
私は思わず息を止める。
どうするんだろう。
肩を揺らすのかな。
「すみません」って起こすかな。
それとも嫌そうな顔をするのかな。
そう思って見ていると、
左のお兄さんは、ほんの少しだけ横目で確認した。
そして、
何事もなかったように、
そのまま姿勢を崩さなかった。
肩を貸したわけでもない。
優しい言葉をかけたわけでもない。
ただ、ほんの数センチも肩を動かさない。
それだけ。
でも私は、
その数センチの優しさを感じ、胸を打たれた。
朝の満員電車。
誰だって疲れている。
誰だって余裕なんてない。
それでも、
名前も知らない誰かの数分の眠りを、
静かに守る人がいる。
その光景は、
社会という戦場で、
今日も戦いに向かう勇者たちが、
ほんの少しだけ、
お互いの重さを支え合っているように見えた。
私が降りるのは、次の駅だ。
きっと、この光景には二度と会えない。
名前も知らない二人。
名前も知らない私。
それでも、この朝、
4号車で見た小さな優しさは、きっと忘れない。
勇者たちよ、今日も健闘を祈る。


やさしさの4号車。
あたたかい文章で、日常を切り取る話がとても良き🐽💕
ちなみちゃんらしさが出てる文章でした✨
こういうホッコリする時間、とても良いですね。