吾輩は、人たらしである。
嫌われるのが怖かった私が、自分を誇らしく思えるようになった話。
「ちなみさんって、人たらしですよね」
初めてそう言われたのは、
社会人になって初めて部下を持った時だった。
褒められているのか、
それとも、揶揄されているのか。
なんとも絶妙な、温度の分からない言葉だった。
でも今は、そんな「人たらし」な自分を、
少し誇らしく思っている。
私の「人たらし」のルーツは、
中学時代に遡る。
私は初めて、いじめにあった。
理由は、一人の男の子と仲良く話していたから。
たったそれだけで、
数人の女の子たちの空気が一変した。
上履きが無くなる。
雑巾が無くなる。
やっと見つけたと思ったら、
雑巾の中からゴキブリが出てきたこともあった。
今思い返しても、なかなか強烈な思い出だ。
高校では、
大好きだったソフトボールを辞めて、
野球部のマネージャーになった。
あの三年間は、
間違いなく私の青春だった。
今でも繋がっている仲間がいるくらい、
濃くて、熱くて、大切な時間。
でも、当時の私も、
学校内で陰口を言われていた。
「男好き」と。
私は昔から、
男女関係なく、人との距離を縮めるのが早かった。
でも、その裏で、人に嫌われることが、
本当は死ぬほど怖かった。
だからこそ、
空気を読むのが上手くなったし。
相手が何を求めているのかを、
無意識に感じ取るようになった。
どうしたら安心してもらえるか。
どうしたら喜んでもらえるか。
どうしたら心を開いてもらえるか。
どうしたらこの場が丸く収まるか。
そんなことばかり考えて、生きてきた。
今から、現実の世界では
少し引かれてしまいそうなことを書く。
この文章の世界なら、
ちゃんと私が伝わる気がするから。
私は、人の懐に入るのが異常に上手い。
もちろん、
そもそも人と話すのが好きなのもある。
相手の価値観や、
人生の背景を知るのも好きだ。
でもそれ以上に、
私は「人の小さな変化」によく気づく。
挨拶を交わした瞬間に、
「あ、この人とは近づける」と分かる時がある。
逆に、
「今はそっとしておいた方がいいな」
という空気も、肌で感じる。
だから、
パッと引く時は引ける。
これも、私の特技のひとつ。
気づけば、
初対面なのに深い話をされることも多い。
恋愛相談。
家庭の話。
仕事の悩み。
誰にも言っていない本音。
「ちなみさんには、なぜか話せる」
そんなことを言ってもらえることもある。
だから今
こんな自分を、私は全力で推したい。
これは、私自身の愛すべき長所だ。
でも、人って本当に難しい。
社会人一年目の時もそうだった。
環境に必死に慣れようとして、
目の前のことを必死にこなして。
上司とも積極的にコミュニケーションを取った。
可愛がってくれる人にも恵まれた。
でも、ここでもやっぱり、
後ろ指を指されたことがあった。
「あの子って、誰にでも媚び売るよね」
もし、
私が媚びを売っているように見えるなら
その人は、
きっと私の本質を知らない。
私が、
嫌われるのが怖くて、
人と向き合っていること。
誰かが居心地悪くならないように、
明るく振る舞っていること。
重たい空気が人一倍苦手だから、
「ちゃんと知りたい」と思って、
心を配っていること。
あの人とあの人が、
これ以上こじれないように。
場の空気が壊れないように。
気づけば、
そんなバランスまで取ってしまうこと。
私だって、疲れる時はある。
一人になると、
どっと消耗している自分に気づくときがある。
だから、
それを「媚び」の一言で片付けられてしまうのは、
やっぱり少し悲しかった。
でも今、
こうやって書きながら思う。
「媚び」って言われても、
別に悪くないのかもしれない。
だって私は、
人とちゃんと向き合いたいだけだから。
ただ、「私は媚び売ってます!」
って大手を振って歩くのは、少し違う気もするから。
「私は、人たらしです。」
という言葉を選んで生きていこうと思う。
人たらしは、
私の中では最高の褒め言葉になった。
ちゃんと相手を見て。
ちゃんと心を向ける。
その結果、
誰かが心を開いてくれるのなら。
誰かに後ろ指を指されたことも、
きっと悪じゃない。
私もそうだったように。
あなたにも似た傷があるのかもしれない。
だから今日も、
私は誰かの心のドアを、
そっとノックしながら生きていく。
あなたが、
あなた自身を褒めるとしたら、どこですか。
今まで、
傷ついた言葉はありますか。


この記事がちゃんとちなみさんを知った記事かも
「人たらし」自分のことを表現するにはあんまり使わないワードですが、たしかにぴったりかも
こうやって「人たらし」って書くのは簡単ですが、そのなかにあるいいこと、悪いこと、自分の内側のことを文字にして表現するのはそんな簡単なことじゃないと思います!
初回記事をみて、「夜」っていう、自分の内側に目がいきがちな時間に、ちなみ自身をさらけ出すこと
そういう相手の内側に届く言葉や行動を自然ととれる人がちなみさん
その人がかく人たらしの記事、面白かったです!
「人たらし」を、傷ではなく長所として引き受け直しているところが素敵でした。
人の小さな変化に気づく力って、軽く見られがちですが、実はかなり高度な対人スキルですよね。
“媚び”ではなく、“人の心の玄関先で靴をそろえる力”だと思いました。